― 2026年1月14日開催 PDM21東京Web会議の議論から ―
2026年1月14日(火)19時30分より、PDM21(Preventive Dentistry & Management 21)東京Web会議・第88回定例ミーティングが開催されました。
下の写真は、その実際の会議中の一場面です。

Zoomを用いたオンライン会議の中で、スピーカー画面と資料を共有しながら、
垂直歯根破折(Vertical Root Fracture:VRF)治療に関するコンセンサス・ステートメントの草案について、参加メンバーで真剣な討議を行っている様子が記録されています。
今回の会議では、今秋に発表予定の「VRF治療に関するコンセンサス・ステートメント」について、筆者が作成した草案(叩き台)をもとに、
筆者が作成した草案(叩き台)をもとに、
- 現在得られている科学的エビデンス
- 日常臨床で実際に起こっている問題
- 患者説明や治療選択における注意点
を一つひとつ確認しながら、意見交換が行われました。
PDM21とは何か― 破折歯治療に真剣に向き合うスタディグループ ―
PDM21は、単に「歯を残す」「新しい治療を試す」ことを目的としたグループではありません。
- 正しい診断とは何か
- その歯は本当に残すべきなのか
- 患者にとって最も不利益が少ない選択は何か
といった、臨床の根幹に関わる問いを、エビデンスと臨床経験の両面から継続的に議論してきたスタディグループです。
特に近年は、破折歯、なかでも垂直歯根破折(VRF)を重要テーマとして取り上げ、保存・抜歯の二元論ではなく、「診断に基づく治療判断」を重視して活動しています。
今回の会議の位置づけ― コンセンサス・ステートメント策定のための実質的議論 ―
2026年1月14日の本会議は、VRF治療に関するコンセンサス・ステートメント策定の中核となる回でした。
今回検討された草案は、
- PubMed Central(NCBI)収載論文
- 国際的な総説・レビュー
- 日本の臨床現場の実情
をもとに、筆者が叩き台として作成したものです。
その内容を、PDM21に所属する複数の臨床家が、
- 「エビデンスとして妥当か」
- 「現場で誤解を生まない表現か」
- 「若手歯科医師・歯科学生にも理解できるか」
という観点から、時間をかけて検討しました。
垂直歯根破折(VRF)とは何か― 歯科大学生が最初に理解すべき基礎 ―
垂直歯根破折(VRF)とは、歯の根が歯の長軸方向に割れてしまう病態を指します。
多くの場合、
- 根管治療後の歯
- 失活歯
- ポストや支台築造が行われた歯
に発生しやすく、決して珍しい病気ではありません。
重要なのは、VRFは「突然起こる事故」ではなく、長年の力の蓄積によって起こる破折であるという点です。
なぜVRF治療で「診断」が最も重要なのか
今回のPDM21会議で、参加者全員の意見が一致した点があります。
それは、VRF治療において最も重要なのは、治療法ではなく「正しい診断」であるという点です。
- 本当にVRFなのか
- どの段階のVRFなのか
- その歯の予後はどう見積もられるのか
これらを曖昧にしたまま治療を選択することは、患者にとって大きな不利益となる可能性があります。
エビデンスが示すVRFの現実― なぜ「抜歯が標準」とされてきたのか ―
今回の草案でも、特に慎重に扱われたのが「VRFは予後不良であり、特に単根歯では抜歯が標準的治療とされてきた」という点です。
国際的な総説では、
- 単根歯VRFでは抜歯が推奨される
- VRFの多くの症例で抜歯が第一選択
- 抜歯以外の選択肢は限定的
であることが、繰り返し明記されています。
これは、「保存治療を否定する」ためではなく、現実を正しく理解したうえで、患者に説明するための前提条件です。
この内容を、なぜ今あらためて共有するのか
SNSやインターネット上では、「VRFでも歯は残せる」という情報が強調されることがあります。
しかし、その多くは適応が厳しく限定された症例であり、すべてのVRFに当てはまるわけではありません。
だからこそPDM21では、
- エビデンスに基づき
- 誇張せず
- 患者にとって不利益にならない
診断と説明のあり方を、コンセンサスとして整理しようとしています。
歯科学生・若手歯科医師へのメッセージ
垂直歯根破折の治療は、「歯を残す技術」を競う分野ではありません。
- 診断力
- エビデンスを読む力
- 患者に正直に説明する姿勢
これらが揃って初めて、適切な治療判断が可能になります。
PDM21は今後も、破折歯治療に真正面から向き合うグループとして、教育的価値のある情報を発信していきます。







