3種類のレーザーを症状や治療目的に応じて使い分けます

歯科用レーザーは、光のエネルギーを利用して、歯や歯ぐきなどを処置する医療機器です。虫歯や歯周病、歯ぐきの切開・止血、口内炎、知覚過敏など、さまざまな場面で活用されています。

レーザーは種類によって、光が吸収される場所、組織に作用する深さ、得意とする処置が異なります。そのため、一種類のレーザーだけですべての治療に対応できるわけではありません。

当院では、特徴の異なる次の3種類の歯科用レーザーを導入しています。

  • Er:YAG(エルビウム・ヤグ)レーザー
  • CO₂(炭酸ガス)レーザー
  • Nd:YAG(ネオジム・ヤグ)レーザー

患者様のお口の状態や治療目的に応じてレーザーを選び、必要に応じて複数のレーザーや従来の治療器具を組み合わせます。治療中の痛みや出血、治療後の腫れなど、身体的な負担をできる限り抑えることを目指しています。

当院で使用する3種類の歯科用レーザー

1.Er:YAG(エルビウム・ヤグ)レーザー

~水分に反応し、歯や歯ぐきの表面を細かく処置~

Er:YAGレーザーは、水分に反応しやすい性質を持っています。光のエネルギーが組織表面の水分に吸収されるため、熱の影響が深い部分まで及びにくく、処置する場所を細かく調整しやすいことが特徴です。

適応範囲内で、虫歯に感染した歯質の除去、歯石の除去、歯の根の表面、歯周ポケットや歯ぐきなどの処置に使用します。

虫歯治療に使用する場合、一般的な切削器具に比べて振動が少なく、「キーン」という音が苦手な方の負担を軽減できることがあります。

ただし、すべての虫歯をレーザーだけで治療できるわけではありません。虫歯の大きさや深さ、発生した場所、詰め物の形を整える必要性などに応じて、通常の切削器具を併用します。

※照射時には冷却のために水を使用するので、水しぶきや「パチパチ」という音を感じることがあります。

2.CO₂(炭酸ガス)レーザー

~歯ぐきなどの軟らかい組織の切開・止血に使用~

CO₂レーザーは、組織表面の水分に吸収されやすく、主に歯ぐきなどの軟らかい組織への処置に使用します。

歯ぐきの切開、不要な組織の除去、止血、歯ぐきの形を整える処置などを得意としています。組織の表面に作用しやすく、処置内容によっては切開しながら出血を抑えやすいことが特徴です。

被せ物を装着する前の歯ぐきの調整や、歯ぐきにできた小さなできものなどの処置に使用する場合があります。

ただし、お口の中のできものには、組織検査や専門的な診断が必要なものもあります。診断前に安易にレーザーで除去することはせず、必要に応じて大学病院や専門医療機関をご紹介します。

3.Nd:YAG(ネオジム・ヤグ)レーザー

~組織の内部方向への作用を生かした処置~

Nd:YAGレーザーは、組織の内部方向へ作用しやすい性質があります。主に、歯ぐきなどの軟らかい組織の切開、凝固、止血などに使用します。

CO₂レーザーが比較的表面への処置を得意とするのに対し、Nd:YAGレーザーは内部方向への作用を生かした処置に適しています。

一方で、使用方法によっては熱の影響が周囲に及ぶ可能性があります。そのため、処置する場所や組織の状態を確認し、出力、照射時間、レーザーを当てる方法などを調整しながら使用します。

3種類を備える理由

3種類のうち、どれか一つがすべての面で優れているわけではありません。大切なのは、それぞれの長所と注意点を理解し、治療する場所や目的に合ったレーザーを選ぶことです。

当院では、レーザーを使用すること自体を目的とせず、レーザーを使用しない治療も含めて、患者様に適した方法を検討します。

レーザー治療の対象となる主な症状

虫歯の検査・治療

レーザー光を利用して歯の状態を数値化し、見た目だけでは判断しにくい初期虫歯の発見や経過観察に役立てる検査機器があります。

測定された数値だけで虫歯を確定するのではなく、視診、触診、レントゲン検査などを組み合わせて総合的に診断します。

虫歯の状態によっては、Er:YAGレーザーで感染した歯質を取り除ける場合があります。ただし、虫歯の大きさや場所によっては、従来の切削器具が必要です。また、詰め物を接着する際には、接着に必要な処理を適切に行います。

歯周病の治療

歯周病治療の基本は、「歯垢・歯石を取り除くこと」「毎日の歯磨きを改善すること」「治療後も定期的なメンテナンスを続けること」です。

レーザーは、歯周ポケット内の歯石や炎症を起こした組織への処置などで、補助的に使用する場合があります。症状や治療段階に応じて、スケーリング・ルートプレーニングと呼ばれる歯石除去などと組み合わせます。

レーザーを照射するだけで歯石がすべてなくなり、歯周病が治るわけではありません。歯周病の進行度を検査し、原因に応じた治療を続けることが重要です。

歯ぐきの切開・形の調整

歯ぐきの切開や形を整える処置、被せ物を装着するための歯肉処置などに、CO₂レーザーやNd:YAGレーザーを使用することがあります。

処置内容によっては、通常のメスによる切開と比較して出血を抑えやすく、縫合を必要としない場合もあります。ただし、処置する範囲や目的によっては、通常のメスや縫合を用いる方法が適しています。

口内炎・知覚過敏

口内炎の痛みや、冷たいものがしみる知覚過敏に対して、症状の軽減を目的としてレーザーを使用する場合があります。

効果の現れ方には個人差があり、一度の処置で症状がなくなるとは限りません。口内炎が長期間治らない場合や繰り返す場合は、ほかの病気が関係していないかを確認します。

知覚過敏だと思っていた症状が、虫歯、歯の亀裂、詰め物の不具合、歯周病などによることもあります。レーザーを照射する前に、まず症状の原因を調べます。

レーザー治療の流れ

1. 診察・検査

症状が始まった時期や経過、持病、服用しているお薬などを伺います。お口の中を診察し、必要に応じて歯周組織の検査やレントゲン撮影を行います。

2. 治療方法のご説明

レーザーを使用する目的、期待できる効果、通常の治療との違い、考えられるリスク、治療回数や費用について分かりやすくご説明します。レーザーが適さない場合は、ほかの治療方法をご提案します。

3. レーザーによる処置

レーザー光から目を守るため、患者様にも専用の保護眼鏡を着用していただきます。使用する機器によって、パチパチという音、水しぶき、温かさ、焦げたようなにおいなどを感じる場合があります。痛みが予想される処置では、必要に応じて局所麻酔を使用します。

4. 処置後の確認

処置した部分の出血や痛みなどを確認します。食事、歯磨き、服薬などに注意が必要な場合は、その内容をご案内します。症状に応じて、経過観察や追加治療を行います。

レーザー治療に痛みや腫れはありますか?

レーザー治療では、症例や処置内容によって、治療中の痛みや出血、治療後の腫れを抑えられる場合があります。しかし、無痛を保証する治療ではありません。

照射中や治療後に、熱さ、刺激、一時的な痛み、腫れ、出血、違和感などが生じる可能性があります。痛みが予想される場合には局所麻酔を使用し、無理のないように処置を進めます。

※持病のある方、妊娠中の方、服用しているお薬がある方、体内またはお口の中に医療機器や金属がある方は、治療前にお知らせください。

レーザー治療の費用と保険適用

歯科のレーザー治療には、治療内容、使用する機器、施設基準など、所定の条件を満たした場合に健康保険が適用される処置があります。一方、治療目的や処置内容によっては、自由診療となる場合があります。

費用は「レーザーを使用したかどうか」だけで決まるものではなく、対象となる病気や実際に行う処置によって異なります。

治療を始める前に、保険適用の有無や費用の目安をご説明します。自由診療を行う場合は、治療内容と費用についてご同意いただいてから進めます。

よくあるご質問

Q. レーザーは放射線ですか?

A. いいえ。歯科用レーザーは、特定の波長を持つ光のエネルギーを利用する医療機器です。レントゲン撮影に使用するX線とは性質が異なり、レーザー照射による放射線被ばくはありません。

Q. レーザーを使えば歯を削らずに済みますか?

A. すべての虫歯をレーザーだけで治療できるわけではありません。虫歯の状態によっては感染した部分の除去に使用できますが、進行した虫歯や詰め物・被せ物の形を整える処置では、従来の器具を併用します。

Q. レーザー治療なら麻酔は不要ですか?

A. 処置内容によっては、麻酔を使わずに対応できる場合があります。ただし、治療する場所や範囲、痛みの感じ方によっては局所麻酔が必要です。

Q. レーザーだけで歯周病は治りますか?

A. レーザーは、歯周病治療における補助的な選択肢です。歯垢・歯石の除去、毎日の歯磨き、定期的なメンテナンスが治療の基本です。

Q. 治療は何回必要ですか?

A. 一度で終了する処置もありますが、虫歯や歯周病の進行度によっては、複数回の治療や経過観察が必要です。診察後に治療回数の見通しをご説明します。

レーザー治療をご検討の方へ

レーザー治療で大切なのは、レーザーを使用すること自体ではありません。症状の原因を適切に診断し、複数の選択肢から治療する場所や目的に合った方法を選ぶことです。

当院では、3種類の歯科用レーザーの特徴を生かし、必要に応じて従来の治療方法と組み合わせています。期待できる効果だけでなく、レーザー治療の限界、注意点、ほかの治療方法についても事前にご説明し、ご理解いただいたうえで治療を進めます。

歯ぐきの腫れや出血、治りにくい口内炎、歯がしみる症状、虫歯や歯周病などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。