歯の命を救い、再発を防ぐための最後の治療

ヘッダー3|いばた歯科

「歯の神経を抜きましょう」

もし歯科医師からそう告げられたなら、それは患者様の歯の未来にとって非常に重大な岐路に立たされていることを意味します。

激しい虫歯などによって歯の内部にある神経(歯髄)にまで細菌が達してしまった場合、その痛みを取り除き、歯を抜かずに保存するために行われるのが「根管治療」です。

この治療は家づくりに例えるならば、建物の「基礎・土台工事」そのものです。

どれほど立派で美しい家(被せ物)を建てたとしても、その下の基礎(歯の根)が軟弱で欠陥を抱えていれば、その家はやがて傾き崩れ落ちてしまいます。

再治療が必要になるケース

「一度治療した歯が数年後に再び痛み出した」「根の先に膿が溜まり、歯茎が腫れることを繰り返している」
このような「再治療」が必要になるケースが残念ながら後を絶ちません。
その根本原因のほとんどは、最初の根管治療が不十分であったことが原因です。

歯の内部の見えない部分に感染源である細菌がわずかでも取り残されていた。
それが時間と共に再び活動を始め、病巣を再燃させるのです。
治療を繰り返すたびに歯は確実に弱くなり、最終的には「抜歯」という取り返しのつかない結末へと近づいていきます。

当院の治療方針

当院の根管治療はこの「再治療のスパイラル」を最初の治療で確実に断ち切ることを最大の目的としています。
それは術者の「経験」や「勘」といった曖昧なものに頼る従来の手探りの治療ではありません。
「精密性」「無菌管理」「技術の標準化」という科学的根拠に基づいた原則に徹底的にこだわり、歯の命を救うための質の高い治療を実践しています。

当院の「再発させない」精密根管治療4つの柱

この従来の方法の限界を克服し、根管治療の成功率を飛躍的に向上させるために、当院では以下の4つの要素を治療の柱としています。

柱1:三次元での精密診断

歯科用CT「3DX」の活用

トップ5CTスキャン|いばた歯科

治療を始める前の正確な「診断」なくして治療の成功はありません。
当院では根管治療を行う際には、モリタ社製の高性能歯科用CT「3DX」を駆使し、歯の状態を三次元的に徹底的に把握します。

CTで明らかになること

従来の二次元レントゲンでは決して分からなかった以下の情報が明らかになります。

  • 歯の根の「本当の数」や「形態」(湾曲・分岐の有無)
  • 肉眼では見えない根の先の「膿の袋(根尖病変)」の正確な大きさと広がり
  • 治療の難易度を左右する「石灰化」や「狭窄」の程度

このCTによる三次元的な「診断力」こそが治療計画の立案と成功への第一歩です。

「この歯は治療が可能か」「抜髄(神経を抜く治療)か、感染根管治療(再治療)か」「難易度はどの程度か」。

治療前に敵の姿を正確に把握することで、的確な治療戦略を立てることができるのです。

柱2:完全な無菌的環境

ラバーダム防湿の徹底

ラバーダム|いばた歯科

根管治療はいわば歯の内部の「外科手術」です。その成功のためには唾液中に存在する数億個もの細菌を治療部位に一切侵入させない「無菌的環境」が不可欠です。
この環境を作り出すための唯一無二の方法が「ラバーダム防湿」です。

治療する歯だけをゴムのシート(ラバーダム)で隔離し、お口の中の他の部分と治療部位とを完全に遮断する。
これにより唾液や呼気に含まれる湿気、細菌の侵入を物理的に防ぎます。

当院のこだわり

日本ではその手間と時間のかかる処置であるためか、ラバーダムの使用率は残念ながら極めて低いのが現状です。
しかし、当院はこれを「根管治療の成功を左右する要因」であると深く認識しているため、どのような症例であっても必ずこのラバーダム防湿を徹底しています。

この地道で確実な一手間を惜しまないこと。それこそが治療の長期的な成功を保証するための私たちの譲れないこだわりです。

柱3:「見て」確実に取り除く

マイクロスコープとNi-Tiファイル

ラバーダムによって作り出されたクリーンな環境の下、いよいよ根管内部の感染除去に取り掛かります。
ここで従来の「手探り」の治療と当院の「精密」な治療との間に決定的な違いが生まれます。

マイクロスコープによる「可視化」

マイクロスコープ|いばた歯科

当院では根管治療の全工程をカールツァイス(Carl Zeiss)社製をはじめとする高性能なマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の拡大視野の下で行います。
これまで見えなかった暗くて狭い根管の内部を明るい照明の下で最大20倍にまで拡大して「直視」する。この「見える」という事実が根管治療に革命をもたらしました。

マイクロスコープで可能になること
  • 見逃されやすい「追加根管」の発見
  • 汚染物質の「取り残し」の防止
  • 硬く塞がった「石灰化根管」の特定と処置
  • 破折歯治療における微細な「破折線」の確認

肉眼では不可能なレベルでの確実な治療操作が可能になります。
特に一度治療した歯の「再治療(感染根管治療)」のように難易度の高い症例において、このマイクロスコープによる確実な視認は治療の成績を大きく左右するのです。

Ni-Tiファイルと専用モーターによる「安全で効率的な形成」

ニッケルチタンファイル|いばた歯科

根管内部を清掃・拡大するために用いるヤスリのような器具を「ファイル」と呼びます。
従来のステンレス製のファイルは硬くて曲がりにくいため、湾曲した根管の中で本来の形態を壊してしまったり(レッジ形成)、最悪の場合器具が折れてしまったりするリスクがありました。

当院ではチタン合金でできた非常にしなやかで弾力性のある「ニッケルチタン(Ni-Ti)ファイル」を標準的に使用しています。
このファイルは複雑に湾曲した根管の形状にも柔軟に追従しながら、内部を安全に、そして効率的に清掃・拡大することができます。

専用モーターの機能

さらにこのNi-Tiファイルをモリタ社製の専用モーター「トライオートZX2」や「X-smart plus」といった根管拡大装置と組み合わせて使用します。
これらの装置は以下の機能を搭載しています。

  • トルク管理(破折防止)
    ファイルにかかる負荷を感知し、折れる前に自動で停止・逆回転する
  • 根管長測定機能
    根の先端までの正確な距離をリアルタイムで測定する
  • 自動正逆回転機能
    湾曲した根管でも安全かつ短時間で形成する

術者の技量に左右されることなく常に安定した質の高い根管形成を実現するための強力なパートナーです。

柱4:隙間なく緊密に封鎖する

先進の根管充填法

感染源を徹底的に除去した清浄な根管。その空間を再び細菌の住処としないために、最終工程として薬剤を隙間なく緊密に充填(封鎖)する必要があります。

この「封鎖」が根管治療の最後の「鍵」となります。
当院では根管の形態や症例の難易度に応じて、主に以下の高精度な充填法を選択しています。

垂直加圧充填法(システムB)

垂直加圧充填法(システムB)|いばた歯科

米国の根管治療専門医の多くが採用している非常に信頼性の高い方法です。
ガッタパーチャというゴム状の充填材を専用の器具(システムB)で根管の内部で加熱して軟化させます。そして根の先端に向かって垂直的に圧力をかけながら高密度に充填していきます。
これにより木の枝のように網の目のように分岐した複雑な形態の根管の隅々にまで軟化した充填材を隙間なく行き渡らせることが可能になります。
細菌が侵入する余地のない緊密な封鎖を実現します。

バイオセラミック系材料(MTAなど)の応用

さらに近年ではMTAセメントに代表される「バイオセラミック系」の材料を根管充填に応用しています。
これらの材料は従来のセメントとは異なり、生体親和性(身体との馴染み)が非常に高く、硬化する際にわずかに膨張する性質を持つため、封鎖性をさらに高めることができます。
また歯の周囲の組織の再生を促す効果も期待できる先進的な材料です。

i-TFCシステム(根築一回法)

i-TFCシステム(根築一回法)|いばた歯科

日本の眞坂信夫先生によって考案された画期的な治療法です。
「根管治療(Treatment)」「根管の封鎖(Filling)」「土台作り(Core)」という従来は別々に行っていた3つの工程を「スーパーボンド」という強力な接着剤と「グラスファイバーポスト」(しなやかな土台)を用いて一度の治療で一気通貫で行う方法です。
私自身、眞坂先生と多くの症例の観察を共に行ってきましたが、症状の重い歯に限定してこの方法を適用しても、その治療後の経過は他の方法と比べても遜色ない良好な結果を示しています。

i-TFCシステムの利点
  • 治療回数が削減され、患者様の負担が軽減される
  • 治療の途中で細菌が再度侵入する機会を減らせる
  • 根の先端までしなやかなファイバーポストが入るため、歯根を補強し、将来の「歯根破折」のリスクを低減できる

当院が最も力を入れている「破折歯接着治療」の概念とも深く通じる歯の保存を追求した治療法です。

なぜ根管治療はこれほどまでに難しかったのか

根管治療が歯科治療の中でも極めて難易度が高いとされるのには、明確な理由があります。
それは私たちが立ち向かう「根管」というものが想像を絶するほど「暗く」「狭く」、そして「複雑」な構造をしているからです。

なぜ根管治療はこれほどまでに難しかったのか|いばた歯科

肉眼では「見えない」世界

歯の根の内部にある「根管」は直径1ミリにも満たない針の穴のような暗く狭いトンネルです。
従来の治療はまさに「暗闇の中を手探り」で行うしかありませんでした。

二次元レントゲンでは「わからない」世界

さらにそのトンネルはまっすぐな一本道ではありません。
木の根のように途中で網の目のように細かく分岐したり(側枝・副根管)、大きく湾曲したり、加齢によってまるで石のように硬く塞がって(石灰化)いたりします。
従来の二次元レントゲン写真ではこのような三次元的な複雑さを正確に把握することは不可能でした。

従来の治療の限界

この「見えない」「わからない」という制約の中で、汚染物質を複雑な根管の隅々からすべて取り除くこと。それがいかに困難であったかは想像に難くないでしょう。

手探りの治療ではどうしても汚染物質の取り残しが生じやすくなります。
そのわずかな取り残しこそが数年後の「再発」の火種となるのです。
そういった難しさをすべて解決したのが当院の根管治療です。

「抜髄」と「感染根管治療」

根管治療には大きく分けて二つのケースがあります。

抜髄(ばつずい)

激しい虫歯などで初めて歯の神経(歯髄)が細菌に感染した場合に行う最初の治療です。
感染した神経を丁寧に取り除き、無菌化して封鎖します。
この最初の治療をいかに精密に行うかが、その歯の未来を決定づけます。

感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)

一度根管治療を受けた歯が数年後に再び感染してしまった場合に行う「再治療」のことです。
前の治療で詰められた充填材をすべて除去し、根管の内部に潜む頑固な細菌をもう一度徹底的に清掃・消毒し直す必要があります。
これは根管治療の中でも最も難易度の高い治療であり、まさに当院が導入しているCT、マイクロスコープ、Ni-Tiファイルといったすべての精密機器の能力が最大限に問われる治療となります。

私たちの限界とその先の連携

質の高い治療の実践

当院では保険診療の枠組みの中であってもこれらの先進的な機器と技術を惜しみなく投入し、可能な限り質の高い治療を実践しています。
「見えない部分」の治療だからこそ、技術力と診断力、そして歯科医師としての誠実さが何よりも求められると私は考えています。

限界を超える症例への対応

しかし、それでも私たちの力を超える極めて困難な症例が存在することもまた事実です。
例えば根管が骨のように硬い組織で完全に塞がってしまっている「完全な石灰化根管」や、解剖学的に極めて稀な異常に湾曲した根管などです。

そのようなこのまま治療を進めても成功率が著しく低いと判断される場合には、私たちは正直にその限界をお伝えします。
そして無理に処置して貴重な歯にさらなるダメージを与えてしまうリスクを冒すよりも「確実に治す」という患者様の利益を最優先に考え、大学病院の専門外来や根管治療のみを専門に行う「歯内療法専門医」といったさらに高度な技術を持つ専門家との連携を図ります。
どうしても抜歯が避けられない場合は、インプラント専門医の資格をもつ院長がしっかり噛める義歯を作ります。

誠実さを大切に

最善の治療とは何かを常に客観的に見極め、必要であれば他の専門家の力を借りることをためらわない。
それもまた私たちの患者様に対する誠実な医療姿勢の一つなのです。

ご相談ください

歯の内部の違和感や痛みがある方。あるいは以前に治療した歯が再び気になり始めた方。

「抜歯しかない」と諦めてしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。
その歯の”命”を救うために私たちができることのすべてを尽くします。