垂直歯根破折(歯根破折)とは?
抜歯と言われた歯を「残せる可能性」まで丁寧に解説
いばた歯科(東京・大崎)
「歯の根が割れているので、抜歯しかありません」
このように説明を受け、強い不安や戸惑いを感じた方は少なくありません。
垂直歯根破折(歯根破折)は、確かに治療が難しく、これまで多くの場合で抜歯が選択されてきた病気です。
しかし近年、診断技術・材料・治療コンセプトの進歩により、条件が合えば歯を残せる可能性がある症例が存在することが、国内外の研究や長期臨床成績から示されるようになってきました。
いばた歯科(東京・大崎)では、PDM21グループの一員として、垂直歯根破折の保存治療に長年取り組んできました。
本ページでは、「抜歯を決断する前に知っておいていただきたい情報」を、できるだけ分かりやすく解説します。
垂直歯根破折(歯根破折)とは
―― 歯の根が縦に割れる病気
歯は、お口の中に見えている歯冠と、あごの骨の中で歯を支えている歯根から構成されています。
垂直歯根破折とは、この歯根に縦方向のヒビや割れ目が生じる状態です。
歯根は歯ぐきや骨の中に隠れているため、ヒビが入っても外からは確認できません。
初期には強い痛みが出ないことも多く、気づいたときには炎症や骨吸収が進行しているケースも少なくありません。
なぜ「抜歯しかない」と言われてきたのか
垂直歯根破折が厄介とされてきた理由には、次の点があります。
- 破折線が歯ぐきの深い部分まで達しやすい
- その隙間から細菌が侵入し、歯ぐきや骨に慢性的な炎症を起こす
- レントゲンでヒビが写らないことも多く、診断が難しい
- 従来は、破折線を確実に封鎖できる治療法が確立されていなかった
このため現在でも、「歯根破折=抜歯」という判断が一般的に行われています。
垂直歯根破折はなぜ起こる?
―― 歯の「疲労骨折」という考え方
垂直歯根破折は、突然起こるように見えて、実際には長年の力の蓄積によって生じることがほとんどです。
「歯が割れやすい状態(素因)」と「強い力や負担(誘因)」が重なり、金属疲労のように少しずつダメージが蓄積した結果、ヒビや割れにつながると考えられています。
歯が割れやすくなる要因(素因)
- 根管治療を受けた歯
神経を取る治療では歯の内部を削るため、象牙質が薄くなり、特に歯ぐき付近が弱くなります。 - 金属ポスト(メタルポストコア)
歯より硬い金属は噛む力を一点に集中させ、長期的に破折リスクを高めます。 - 歯根の形態
根が薄い歯、扁平な歯、溝のある歯は構造的に割れやすい傾向があります。 - 加齢・治療歴
大きな詰め物や被せ物が多い歯ほど、残存歯質が少なくなり破折しやすくなります。
強い力が加わる要因(誘因)
- 食いしばり・歯ぎしり
- 片側だけで噛む癖
- 硬いものをよく噛む習慣
- 噛み合わせのバランス不良
特に無意識の食いしばりでは、体重と同程度の力が歯にかかることもあり、根管治療歯では注意が必要です。
垂直歯根破折の症状
―― 気づきにくいサイン
垂直歯根破折の症状は、むし歯や歯周病、根管治療後のトラブルとよく似ています。
- 噛んだとき、特定の歯だけズキッと痛む
- 何もしていないときは痛くない
- 歯ぐきの一部が腫れたり引いたりを繰り返す
- 歯ぐきに膿の出口(フィステル)ができる
- 根管治療後、数か月〜数年して再び違和感が出る
これらの症状だけで、垂直歯根破折を見分けることはできません。
診断方法――「総合的な評価」が重要です
歯周ポケット検査

垂直歯根破折では、1か所だけ異常に深い歯周ポケットが見られることがあります。
歯周病のように全体が深くなるのではなく、「点」で深くなるのが特徴です。
レントゲン・歯科用CT(CBCT)

J字型・ハロー型と呼ばれる骨吸収像が見られることがあります。
ただし、ヒビそのものが写らない場合も多く、補助診断として用います。
マイクロスコープによる確認

必要に応じて歯科用マイクロスコープを用い、歯根表面を直接確認することで、診断精度を高めます。
なぜ近年「歯を残す治療」が検討されるようになったのか
従来は、
- 細菌侵入を完全に遮断できなかった
- 骨吸収が進んだ症例では清掃・封鎖が困難だった
- 長期的に安定した接着材料・術式がなかった
といった理由から、抜歯が標準とされてきました。
しかし現在では、接着材料・精密診断機器・治療設計の進歩により、条件を満たした症例では保存治療が検討されるようになっています。
PDM21といばた歯科の考え方
――「残す価値」を評価する
いばた歯科は、自由が丘を拠点とするPDM21グループの一員として、約30年にわたり垂直歯根破折の保存治療に取り組んできました。
この治療コンセプトの基盤には、東京・自由が丘の眞坂歯科で長年積み重ねられてきた臨床研究の流れがあります。
中心となって研究・臨床を行ってきた故・眞坂信夫先生は2019年9月8日にご逝去されましたが、その膨大な臨床データと治療思想は後進へと受け継がれています。
これらの臨床成績は、娘である眞坂こづえ先生によって整理・解析され、最大39年・369根を対象とした長期追跡研究として2025年に論文化されました。
この研究により、条件を満たした症例では、歯根破折歯が長期間機能し得る可能性が示されています。
歯を残す選択肢①
スーパーボンドによる接着保存治療

**スーパーボンド(4-META/MMA-TBBレジン)**は、日本で開発されたレジン系接着材で、象牙質・セメント質に深く浸透し、強固で生体適合性の高い接着を可能にします。
治療では、
- 破折線に入り込んだ細菌・汚染象牙質の除去
- 破折線の確実な封鎖
- 破折片の接着固定・一体化
という考え方を基本に、症例ごとに治療設計を行います。
歯を残す選択肢②
意図的再植(Intentional Tooth Replantation)

意図的再植とは、歯を一度抜き、口腔外で処置を行った後に元の位置へ戻す治療法です。
通常の再根管治療や外科処置では対応が難しいケースで検討されます。
近年の系統的レビューでは成功率は約86〜91%と報告されており、American Association of Endodontists やEuropean Society of Endodontologyのガイドラインでも、条件付きで有効な選択肢と位置づけられています。
すべての垂直歯根破折が残せるわけではありません

- 破折線が歯根全周に及ぶ
- 骨がほとんど残っていない
- 歯根が極端に短い
- 重度の歯周病がある
このような場合、無理に保存を行うことが、かえって患者さんの不利益になることもあります。
いばた歯科が大切にしていること
患者さんの価値観と将来設計を尊重する
- 抜歯ありきで判断しない
- CT・マイクロスコープによる精密診断
- エビデンスに基づいた材料・術式の選択
垂直歯根破折が疑われる方へ ―― ご相談ください
- 根管治療をした歯が再び痛む
- 噛むと特定の歯だけ違和感がある
- 歯ぐきの腫れを繰り返す
- 他院で「抜歯しかない」と説明された
このような場合、歯を残せる可能性があるかどうかを評価する価値があります。
いばた歯科(東京・大崎)では、Web予約・お電話でのご相談、セカンドオピニオンにも対応しています。抜歯を決断する前に、ぜひ一度ご相談ください。