治療の精度を決める標準装備

「歯の治療は痛みが取れれば、それで終わり」「詰め物や被せ物は入れば、どれも同じ」
もしそのように考えられているとしたら、それはこれまでの歯科医療が「見えない部分」の重要性を、患者様に十分にお伝えしてこなかった結果かもしれません。

私がこれまでの治療経験から確信していること。それは「治療の成否は目に見えない、ミクロン単位の精度で決まる」という事実です。

例えばセラミックの被せ物と歯の土台との間に、髪の毛一本分(約50ミクロン)の隙間があったとしたら、どうなるでしょうか。
その隙間は細菌が侵入し繁殖するための、格好の「巣」となります。
やがてその内部で、再び虫歯(二次カリエス)が発生し、数年後にはまた治療のやり直しが必要になる。

あるいは歯の根の治療(根管治療)において、木の枝のように複雑に分岐した、目に見えない根管を一つ見逃してしまったとしたら。
その内部に残った細菌が数年後に再び活動を始め、根の先に膿の袋を作り、激しい痛みを引き起こす。

当院が目指すこと

  • 治療を繰り返さないこと
  • ご自身の歯の寿命を、最大限に延ばすこと

この当院が掲げる「歯の保存」という理念を、単なるスローガンではなく「現実」のものとするために、私たちは術者の「経験」や「勘」といった、曖昧なものに頼ることをやめました。
その代わりに私たちが選択したのが、「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」をすべての治療の「標準」とすることです。

全ユニットを支える世界最高水準の「眼」

当院はこの精密治療の「眼」として、単にマイクロスコープを導入するだけでなく、その「質」にも徹底的にこだわっています。

設置されている3台すべてが、世界中の脳神経外科や眼科といった、命と機能に直結する、最も精密な手術で絶大な信頼を寄せられる、ドイツのハイエンド・メーカーのものです。

1. カールツァイス社製 OPMI PROergo(最高機種)

OPMI PROergo|いばた歯科

ドイツが誇る、世界的な光学機器メーカー「カールツァイス(Carl Zeiss)」社。その歯科用マイクロスコープにおける最高機種の一つが、OPMI PROergoです。
医療分野で170年以上にわたり培われてきた、ツァイスのレンズが映し出す視野は他の追随を許さない、圧倒的な「解像度」「焦点深度(ピントの合う範囲)」「明るさ」を誇ります。
特に歯の根の最も深い部分や、破折線の微細な診断など、治療の成否がほんのわずかな「見える・見えない」の差で決まるような、最も困難な症例においてこのPROergoは、術者にとって最強の「眼」となってくれます。

2. メーラー社製 ユニバーサ 300(最高機種)

マイクロスコープ|いばた歯科

カールツァイスと並び、1864年の設立以来、精密光学機器の分野で世界的に高い評価を受け続けるドイツの「メーラー(Möller-Wedel)」社。
その歯科用ラインナップにおけるハイエンドモデルの一つが「ユニバーサ 300」です。

この機種もツァイスに比肩する、極めて優れた光学性能と堅牢で安定した操作性を両立させており、精密な虫歯治療(MI治療)、セラミック修復物のための精密な歯の形成(土台作り)、日常的な歯周外科処置など、幅広い精密治療における「高精度な標準機」として当院の医療品質を支えています。

3. メーラー社製 アレグラ 330(可変鏡筒搭載)

アレグラ 330(可変鏡筒搭載)|いばた歯科

「アレグラ 330」もまた、メーラー社の優れた光学系を受け継ぐ高性能モデルですが、この機種が持つ最大の特徴は「可変鏡筒(バリアブル・アイピース)」という機能にあります。これは術者の疲労を排し、治療の質を持続させるために極めて重要な機能です。
根管治療や複雑な破折歯接着治療といった治療は、時には2時間以上にも及ぶ、術者の極度の集中力を要する繊細な作業です。
従来の顕微鏡のように接眼レンズの位置が固定されていると、術者は治療する歯の位置に合わせて無理な姿勢での作業を強いられます。
この「無理な姿勢」が術者の首や腰に疲労を蓄積させ、結果として治療後半での集中力や、指先の精密さの低下を招くリスクとなっていました。


アレグラ 330の可変鏡筒は、術者が常に背筋を伸ばした、最もリラックスした理想的な姿勢を保ったまま、接眼レンズの角度だけを、自由に変えることができます。
これにより、どれほど長時間にわたる困難な治療であっても術者の集中力とパフォーマンスが、治療の最初から最後まで一切低下することがありません。
術者のコンディションを常に最高に保つこと。それこそが患者様にとって、最も安全で確実な治療結果を保証するための、重要な基盤となるのです。

当院の「当たり前」は日本の歯科医療の「3%」

私たちの理念|いばた歯科

歯科医療におけるマイクロスコープの有用性は、世界中の研究で広く認められています。
特にアメリカの歯内療法(根管治療)専門医は、マイクロスコープの使用が必須とされているほどです。
しかし、日本国内の歯科医院においてこのマイクロスコープを導入している医院は、未だにわずか数パーセント(3〜4%)に過ぎないというのが現状です。

その理由は、機器そのものが非常に高額であることと、その性能を100%引き出すためには術者に高度なトレーニングと熟練した技術が求められるためです。
また、たとえ導入していたとしても、その多くは根管治療などの、ごく一部の困難な症例にしか使われていないというケースも少なくありません。

当院の方針

当院は違います。私たちはこのマイクロスコープこそが、現代の精密な歯科医療を行う上で「特別な機器」ではなく、「必要不可欠なインフラ」であると考えています。
だからこそ当院では、すべての診療ユニット(全3台)にカールツァイス社製、メーラー社製といった、世界最高水準のハイエンド・マイクロスコープを設置しています。

これは特定の患者様のためだけではありません。
当院を訪れるすべての患者様に、初診の検査から日常的な虫歯治療、セラミックの土台作り、歯周病の処置に至るまで、すべての治療プロセスにおいてこの「拡大視野」による、質の高い精密な医療を受けていただくため。
それが私たちの医療に対する「標準」であり、患者様への「約束」なのです。

「肉眼」では決して到達できない領域

マイクロスコープが拓く精密医療

ではマイクロスコープを用いることで、従来の肉眼やルーペ(拡大鏡)による治療と具体的に何が変わるのでしょうか。

それは歯科医療のあらゆる側面に、革命とも言えるほどの質の向上をもたらします。

1. 歯の寿命を守る「最小限の切削(MI)」

虫歯治療において歯を削る量は、その歯の将来の寿命を直接的に左右します。
マイクロスコープの最大20倍まで拡大された、明るい視野の中では虫歯に侵された病変部と、守るべき健康な歯質との境界がミクロン単位で明確に識別できます。

う蝕検知液|いばた歯科
う蝕検知液との併用

拡大視野で確認しながら、さらにこの検知液を用い、染まった部分だけをピンポイントで、かつ最小限に除去していきます。
これにより、従来の治療のように「念のため大きめに削っておく」といった、不確実な治療を完全に排除します。
健康な歯質を1ミクロンでも多く残すこと。それが歯の強度を保ち、将来の破折リスクを低減させるための、最も重要な鍵となります。

2. 再発を防ぐ「完璧な適合」

当院が力を入れている、セラミック治療(デジタル審美治療)が長期的に安定するかどうかは、歯と修復物の「適合精度」で決まります。
被せ物の土台となる歯の形成(削合)を、マイクロスコープ下で行うことでその境界線(マージン)を、段差や隙間のない、極めて滑らかな状態に仕上げることができます。

デジタルと拡大視野の融合
  • 精密なスキャナーで読み取った、精密な土台のデータ
  • それに基づき院内のCAD/CAMシステムで製作された、精密なセラミック

この「精密な形成」と「精密な製作」が、寸分の狂いもなく融合することで細菌が侵入する隙間を物理的になくし、二次的な虫歯や歯ぐきの炎症を根本から防ぐのです。

3. 歯を救う「精密根管治療」と「破折歯接着治療」

当院の「歯の保存」理念の、まさに核心を担うのがこのマイクロスコープです。
(詳細は「根管治療」「破折歯治療」のページもご参照ください)

精密根管治療

直径1ミリにも満たない、暗く複雑な歯の根の内部(根管)。マイクロスコープはこの「暗闇の中の手探り」であった治療を、「確実な視認下」での治療へと変えました。
肉眼では決して見つけられなかった、隠れた追加の根管(副根管)を発見し、感染物質の取り残しをなくし、薬剤を隙間なく充填する。
「再発させない」根管治療は、マイクロスコープなくしてはもはや成り立ちません。

破折歯接着治療

「抜歯」と診断された歯を救う、最後の砦。
CTでも判別困難な、微細な破折線(ヒビ)を直接「見て」特定し、その内部の汚染物質を超音波機器(ソルフィーF)などで徹底的に清掃・接着する。
この神業とも言える処置を可能にする唯一の「眼」が、マイクロスコープなのです。

4. 治癒を早める「低侵襲な歯周病治療・歯周外科」

歯周病治療においても、マイクロスコープはその真価を発揮します。歯周ポケットの奥深く、歯根の複雑な形態の表面にこびりついた、頑固な歯石(縁下歯石)。これこそが歯周病を悪化させる元凶です。

マイクロスコープでこの取り残しを見逃さず、徹底的に除去することで効果的な歯周治療を可能にします。また、歯ぐきの形を整えたり再生させたりする「歯周外科手術」においても、拡大視野の下で極めて細いメスや、髪の毛よりも細い縫合糸を用いて組織へのダメージを最小限に抑えた、繊細な処置が可能になります。
これは術後の痛みや腫れを大幅に軽減し、傷跡がきれいで、より早い治癒を促すことにも繋がります。

「ルーペ(拡大鏡)」との決定的な違い

「ルーペ(拡大鏡)」との決定的な違い|いばた歯科

「他の医院でも先生がメガネのような拡大鏡(ルーペ)を使っていますが、それとは違うのですか?」
これは患者様から、よくいただくご質問です。答えは明確に「違います」。
ルーペも肉眼よりは、はるかに優れた視野を得られる素晴らしい器具です。
しかし、マイクロスコープとルーペとの間には治療の「質」を決定づける、二つの決定的な違いが存在します。

違い1:倍率と焦点深度

ルーペの倍率は一般的に2倍から、高くても8倍程度です。

一方、マイクロスコープは3倍程度から、最大で20倍以上まで術者が足元のペダルで、自由に倍率をコントロールすることができます。

治療の全体像を把握する時と、根管の先端の0.1ミリの感染源を探す時とで最適な倍率を、瞬時に切り替えられる。

この「ズーム機能」が治療の次元を、全く異なるものにします。

違い2:照明(同軸照明)

これこそが最も本質的な違いです。
ルーペの照明は術者の額や、メガネの横に取り付けたヘッドライトです。そのため、どれほど明るくても治療部位に対して必ず「斜め」から光が当たることになり、奥まった部分には必ず「影」ができてしまいます。

歯の根の内部や深い歯周ポケットの奥は、この「影」の中に隠されてしまうのです。一方、マイクロスコープの照明は術者が見ているレンズの、まさに「内側」から術野を照らし出します。
これを「同軸照明(どうじくしょうめい)」と呼びます。

術者の視線と光の進む道が完全に一致するため、どれほど暗く、どれほど深い場所であっても一切の「影」を作ることなく、その最深部までを明るく照らし出すことができます。

根管の奥底に潜む、見逃された感染源を確実に捉えることができるのは、この同軸照明を持つマイクロスコープだけなのです。

「見える」から「わかる」へ 

患者様と共有する医療

マイクロスコープは術者のためだけの「眼」ではありません。
当院ではマイクロスコープで捉えた映像を、診療台の横にある大型モニターにリアルタイムで映し出すことができます。

患者様が確認できること

    • 今、どのような治療が行われているのか

    • ご自身の歯のどの部分が、どのようになっていたのか

    • 治療によって、どれだけきれいになったのか

これらを患者様ご自身の目で、治療中あるいは治療後に一緒にご確認いただく。
それが当院が掲げる「見える診療、わかる説明」の、まさに最前線です。

「百聞は一見に如かず」

ご自身の目でミクロの世界で起きている「事実」を見ていただくこと以上に、治療の必要性や予防の重要性について深くご理解いただける方法はありません。

マイクロスコープは歯科のスタンダードです

マイクロスコープによる精密治療は、もはや「特別な治療」ではなく、質の高い歯科医療を受ける上での「新しいスタンダード」です。
私たちはこの「標準」のレベルを、これからも追求し続けます。