6.諸外国に比べて異常に多い銀歯
海外と比べると、日本人だけが異常に銀歯が入っているという事実があります。それは先進国と比べてではありません。
後進国でもこのようなことは無いのです。このことは、国民が望んでいるのではなく、日本の歯科医師が選択した結果なのです。
いばた歯科では、数年前より銀歯を詰めることは一切行っておらず、現在は完全なメタルフリーの治療に移行しております。
進化した歯科用セラミック
以前、技工士によるオールセラミックスクラウンは、非常に脆く、強度を保つ為に金属の裏打ちの上にセラミックを焼き付ける「メタルボンド」が主流でした。過去にセラミックの歯を入れた方は、ほとんどこのタイプでしょう。このメタルボンドの一番の欠点は、裏打ちが金属であるため、光を通さないため、どうしても、自然な美しさは劣ってしまいます。しかし、現在では「CAD/CAM技術」の発展により、品質にばらつきがないセラミックブロックをコンピュータ制御で削り出すことにより、強度のあるオールセラミックスが製作できるようになりました。この技術の応用したものが「セレック(CEREC)」です。
割れることに対して、強度的に優れているのは、2008年にやっと日本で発売されたe.max(ivocclar社)ブロックでした。現在ではさらに強度を加える為にジルコニアを成分に加えたSuprinity(vita社)を主に使用しています。
2013年には、今までにない画期的なブロックであるENAMIC(vita社)が発売されました。それは、100%のセラミックスを86%まで、ヘチマのような構造加工し、14%レジンを注入したブロックです。セラミッククラウンが割れる場合は、ガラスと同じでひび割れが形成後に割れます。即ち高強度でなくとも、ひび割れがしにくいレジンを注入することによって、割れることを防ぐことができるのです。一方86%セラミックスであるので、しっかり仕上げれば、セラミックスのブロックと全く同じです。
また、この材料の最も大きな特徴は歯より少し減りやすい点です。ENAMICは、天然歯より少し減りが早いため、天然歯を摩耗させず、とても優しい材料です。
ジルコニアクラウンについて
ジルコニアクラウン、ジルコニアセラミックスは、治療には全て「CAD/CAM」の技術が使用されています。
インターネット上では、コンピュータを使用するCAD/CAMの技術で作られているから、今までの金属冠より精度が高いというような、誤った説明が見受けられます。金属冠は鋳型に金属を流し込む方法で熟練した技工士が品質の高い金属を鋳造すればCAD/CAM冠より精度の高い修復物を作ることもできます。
ただ、「保険診療での銀歯」は、「混ぜ合わせた合金」であり、決して精度が高い材料ではありません。また、その合金で作る詰め物や被せ物は、国からの診療報酬の値段も決まっているため、製作コストの面でも、効率を求めるため、技工士が、流れ作業的に大量に制作することが多く、どうしても精度が悪くなります。
一方、ジルコニアクラウンは、単価が高いため、一般的に技工所の中でも、熟練した技工士が制作することが多く、精度が高い修復物ができるのです。
鋳造冠やオールセラミックスであるe.max(イーマックス)プレスなど、「プレス」で制作される修復物であれば、多少の凸凹などがあったとしても、あまり問題なく適合した被せ物ができます。ところが、CAD/CAMの場合は、この多少の凸凹が命取りになります。スキャナーは、そのままの凹凸を撮影しますが、ミリングマシンは、削る「バー」が、凸凹を再現でないので、その部分は大きく削るようにプログラムされており、精度が良くない技工物が出来上がってしまいます。言い換えれば、歯科医師の技術がどの程度かにかかっているといえます。
また、ジルコニアの場合、ジルコニアにセラミックスを乗せた「ジルコニアセラミックス」と、全てジルコニアでできている「オールジルコニア」がきちんと区別されていないことがあります。
ジルコニアセラミックスは、裏打ち(フレーム)がジルコニアで、表面はセラミックスで覆われたものです。表面はセラミックスなので、オールジルコニアに比べ、強度は下がりますが、審美性はとても良いので、前歯や小臼歯など、見える部位には最適です。一方、全てがジルコニアでできている、オールジルコニアは、透明感はあまりなく、審美性に劣りますが、強度があるため、奥歯に適しています。 しかし、今では、透明感を兼ね備えたジルコニアが各社より発売されるようになり、前歯から大臼歯までフルジルコニアでの制作が可能となる傾向にあり、より一層ジルコニアが使用される頻度が高まることは確実です。
ただ、ジルコニアは人工ダイヤモンドの一種ともいわれるほど、非常に硬い素材であるため、あまり知識のない歯科医師が、誤った調整をしてジルコニアの歯を装着すると、噛み合う側の、天然歯が、異常に磨耗してしまうという可能性もあり、装着したジルコニアがかえって害になってしまう危険性もあるのです。
以上のように、ジルコニアを使用すためるには、「形成」や「装着」の知識や経験、そしてコツが必要となります。ただ価格が安いという条件だけで歯科医院を選択することは、後のトラブルにもつながることになりますので、ジルコニアの特性を良く理解した歯科医院を選択することが非常に重要となります。
CADCAM2つの型取り方法(直接法と間接法)
CADCAM技術を活用したオールセラミックスクラウンやジルコニアクラウンの製作には直接法と間接法があります。
直接法について
直接法とは、口腔内カメラ(スキャナー)を入れて直接撮影を行う方法です。
即日で修復が可能。ガムのような印象材が不要なため、資源やゴミの問題の問題も無い。
導入費用が高額である。
「直接法」の代表的なものに、「セレック」があります。セレックは、即日で審美治療が終わることが可能な方法です。特に神経がある生活歯には有効で、細菌感染などのリスクを限りなく抑え、治療時間の短縮も可能です。セレックは、インレー(詰め物)、単冠(一本の被せ物 )に向いているシステムと言われています(大きなブリッジ(4本以上)、インプラントなどの複雑な処置は、間接法が取られるのが一般的です)。
セレックは、基本的に歯科医院をターゲットに開発されたシステムで、「ソフトウエアー(CAD)」から、「ハードウエアー(CAM)」まで、一体で開発された大変優秀なシステムです。
間接法について
「間接法」は、従来からとられている方法で、ガムのような材料(印象材)を使用し、歯型を取ります。その歯型で石膏模型を作成し、その模型を技工用光学印象機器(スキャナー)に取り込んで、歯科技工士が作成する方法です。
大きなブリッジ(4本以上歯を連結して作成)や、インプラントでの審美修復物を作成する、あるいは少し凝った審美修復物を作成するといった場合には、この方法が長けていると言われています。
この場合に使用する技工用の光学印象機器やシステムについて、日本の大手歯科メーカーの多くは3shape社のシステムを採用しています。3shapeシステムは、光学印象とソフトウエアーの開発を専門とする世界最大のシステムであり、日本の主要な歯科のメーカーもこのシステムを採用し、自社ブランド(OEM)として販売しています。
今後はこれらの方法の良いとこ取りの方法が、世界の主流になると考えられます。型取りはセレックシステムと同様に口腔内で光学印象(スキャン)を行い、そのデータでテクニシャン(歯科技工士)が作成するといった方法です。
「3shape」は、歯科医院をターゲットとしたセレックとは対照的に、歯科技工所をターゲットに開発されたシステムで、多くのテクニシャン(歯科技工士)の要望を開発に取り入れており、非常に凝った操作が可能になっているといわれています。つまり、1本から多くても奥歯以外の3本までの即日審美修復は「セレックシステム」、3本以上の大きなケース、インプラント修復のケースなどは「3shapeシステム」で行うという形です(どちらのメーカーも今後は反対の分野にシェアを拡大しようとしているので、今後はこの構図も変わることが予想されます)。
いばた歯科では、即日修復が可能な「セレック」ならびに「3shape」を導入しており、全て自院でのCAD/CAMシステムを利用して、技工士が審美修復物を作成し患者様にご提供をすることを可能としています。